心地よい暮らし。

50代突入。夫と二人暮らし。心地よい暮らしを模索中。

〈本〉鬼平犯科帳 (池波正太郎著)

やっと読み終わりました。

鬼平犯科帳 全24巻。

久しぶりに池波作品の楽しさを思い出しました。

 

鬼平犯科帳(一): 1

鬼平犯科帳(一): 1

 

 

🔳あらすじ

江戸中の盗人から恐れられた火付盗賊改方長官   長谷川平蔵が主人公。実在の人物ではありますが、内容はほぼフィクションです。

 

妾腹の子として生まれ、その出自ゆえ継母にうとまれた平蔵。その反発から放蕩無頼な日々を送るが、唯一、剣の修行に打ち込むことだけが支えとなっていた青年時代。

 

紆余曲折の末、正式に父親の跡目相続してからはそうした生活からは一切足を洗うものの、その後、天職ともいえる火付盗賊改方長官に就任することに。

 

若き日の無頼ぶりも生かされ、やがて鬼の平蔵と恐れられる大活躍が始まります。

 

🔳鬼平犯科帳の魅力は

なんといっても人の強さも弱さも含んだ多面性が描かれている点ではないでしょうか。

 

「人間というやつ、善事をおこないつつ、知らぬうちに悪事をやってのける。悪事をはたらきつつ、知らず識らず善事をたのしむ。これが人間だわさ」

 

人が誰でももっている心の闇。ふとしたはずみでその闇に足元をすくわれ道をふみはずす可能性は誰にでもある。そう考えている様子が読み取れます。

 

それは、妾腹の子として継母との確執で家を飛び出し、若い頃は放蕩無頼の限りを尽くした平蔵だからこそ、「自分だって一歩間違っていたらどうなっていたか」という思いを忘れることがない。

 

そうした人の心のゆらぎや、義侠心、功名心、愛憎等が絡み合って展開していくストーリーを軽妙に描き、心地よく楽しませてくれます。

 

🔳もしかして、理想のビジネス書⁉︎

とにかく、この主人公は誰よりも動きます。高みから指示するだけの上役ではない。一緒に汗をかき、命がけではたらく長官に部下も心酔していきます。

 

それに加えて細やかな目配り、心配りがあります。「この人は自分の心の内を本当に分かってくれている」と思える人に出会えるのは幸せです。

 

そして人材育成にしても、若手に対しては多少の落ち度は見過ごしてやりその成長を見守っています。

 

ただし、正すべき時には糺す。任せるところは任せる。そして、何事も最後は「俺が責任をとる」の気構えがあります。

 

ちょっとカッコ良すぎて実在はしない気がしますね。ノウハウだけ語るビジネス書を読むくらいなら、よっぽど人の心の機微を教えてくれる理想的な指南書にもなるようにも思います。

 

🔳続きを読みたかった

それにしても、池波作品は四季の移ろいや食事の描写が本当に上手いですね。

 

読んでいるあいだ、蕎麦と日本酒を口にする機会が確実にふえました。知らず識らずのうちに影響をうけている自分がおかしいです。

 

池波正太郎は大正生まれ、昭和に活躍した作家です。そう考えると随分昔の作品ですが、今読んでも十分面白く読めました。

 

窮屈で息苦しさを感じることも多い今の時代にこそ、こうした作品の価値はあるようにも思えます。

 

残念ながら平成2年に逝去されため作品は永遠に未完になりました。もっと続きが読みたかったです。