(江戸さんぽ)江戸時代の刑場跡歩き、さらに彰義隊の歴史に触れる
夏休み2日目。
今日は江戸時代の牢屋敷や刑場跡という少し変わったルートを中心に歩く予定です。
スタートは小伝馬町駅から。
安政の大獄で処刑された吉田松陰や橋本左内の終焉の地でもあります。
🔳吉田松陰終焉の地〜小伝馬町牢屋敷跡
まずは、十思公園を目指します。
ここは江戸時代、牢屋敷があった場所です。
当時、牢屋敷の長官である牢屋奉行は石出帯刀(いしでたてわき)。代々引き継がれる世襲制でした。
この牢屋敷が一番大変だったのは安政の大獄の時だったことでしょう。街中の看板にも「幕末当時勤王志士96名を処刑し…」と書かれている凄まじさです。
今は昔の面影はない静かで落ち着いた公園になっています。
当時の痕跡を残すのは、公園の一隅にある記念碑と牢屋敷の遺構くらいしかありません。
吉田松陰終焉の地の碑。
松蔭辞世の句、「身はたとひ 武蔵の野辺に朽ちぬとも 留め置かまし 大和魂」が刻まれている。
小伝馬町牢屋敷の遺構。
日本橋石町より移された時の鐘。
公園に隣接する十思スクエアという建物の中に、小伝馬町牢屋敷の模型がポツンと置かれていました。
牢屋敷の模型。石出帯刀の住居や同心の宿舎、牢や刑場の様子が分かります。
当時は、身分によって牢屋の部屋割りが分けられていました。
十思公園に隣接して二つの寺院があります。
死罪になった犯罪者の菩提が弔われた大安楽寺と日蓮宗身延別院です。
こちらは大安楽寺内にある江戸伝馬町処刑場跡の碑。
せっかく訪れてはみたものの、史跡の少なさに少々驚きました。
やはり処刑場跡という特殊な歴史の跡地のせいでしょうか、あまり史跡等積極的に残すことがなかったのかもしれません。
🔳吉田松陰、橋本左内等の墓が残る小塚原刑場跡
小塚原の刑場は、火罪、磔、獄門などが執り行われた場所です。その他にも無縁の供養、刑死者を使って刀の試し切りや腑分け(解剖)も行われたと説明があります。
まずは、延命寺へ。
ここには回向院から移された「首切り地蔵」と呼ばれる地蔵尊があります。刑死者の菩提を弔うために篤志家によって建立されたものです。
続けて、小塚原回向院へ。
ここは、小伝馬町牢屋敷で処刑された吉田松陰や橋本左内等の埋葬された場所です。
小塚原刑場跡に立つ小塚原回向院には、二人の墓が立っています。
橋本左内の墓。
吉田松陰の墓。ただし、松蔭の亡骸は後に高杉晋作等により改葬されているため空墓です。
そして、もうひとつ。
駐車場脇にひっそりと残されているのが「解体新書」の表紙のレリーフです。
明和8年(1771)、杉田玄白、中川淳庵、前野良沢等は、小塚原刑死場で刑死者の腑分けを見学し、人間の体が西洋の解剖学書に書かれている通りであるこに驚嘆し翻訳を決意したそうです。
これが後に「解体新書」として完成します。
この逸話も興味深いですね。
🔳上野戦争の歴史を語る黒門と彰義隊の墓がある円通寺
せっかく南千住まで来たので、円通寺にも足をのばしてみることにします。
彰義隊の墓。
旧寛永寺の黒門。
無数の弾痕から戦争の激しさがしのばれます。
ここまで来ると、ジリジリと照りつける日差しに大分消耗してきました。道向かいに唯一あったお店でランチにします。
チェーン店ですが落ち着いた雰囲気でゆっくり食事を楽しむことができました。
お皿がたくさん並んでいるだけで楽しい気持ちになります。
🔳寛永寺の歴史に触れる
今度は上野の寛永寺を目指します。
鶯谷駅で電車をおり歩いて行くと、途中、突然壮麗な朱塗りの門が現れます。四代将軍家綱霊廟の門のようです。
四代将軍家綱霊廟の門。
現在の寛永寺は不忍池周辺の賑わいから少し離れた場所にあります。この日も境内は人気も少なく静かな佇まいです。
そもそも寛永寺というのは、元和8年(1622)
、二代将軍秀忠が上野の台地を天海に寄進したのがはじまりといわれ、かつては16万坪という広大な寺域だったそうです。
幕末には、鳥羽伏見の戦いで敗れた十五代将軍慶喜が謹慎していたというのも寛永寺です。
その後、戊辰戦争の一つである上野戦争で彰義隊が戦ったのは寛永寺正門の黒門前口。先程見てきた円通寺に移された門がそれですね。
慶応4年(1868)、当時は上野公園内大噴水の地にあった旧寛永寺はこの時の戦いで焼失。明治12年、川越喜多院から移築したのが現在の寛永寺になります。
歩けば歩くほど色々な歴史が重なって見えてきます。そして、時代が移り変わっていくのはそんなにたやすい事ではないということを実感します。
上野公園に入る手前に上島珈琲で一休み。こちらは駅前より人も少なくていいかもしれません。
店内2F。欄間などの装飾で落ち着いた雰囲気。
アイスコーヒーで回復したため、夫が見たがっていた松方コレクションも見ていくことにしました。
今日は本当に欲張りな1日です。
私は日本画の方が好きなので、あまり西洋画は詳しくありません。
それでも、ルノワールの《帽子の女》、ゴッホの《アルルの寝室》は一目で目を惹く作品でした。
館内も夕方からの入館だったせいか、思ったよりもゆったり鑑賞することができました。
コレクションはもちろん素晴らしいものですが、松方氏本人の生涯の方がよほどドラマチックな気がします。
夕暮れの上野。
最後は、アメ横でお疲れ様会です。
今日は2万歩近く歩きました。
我ながらびっくりです。
▷参考図書
江戸ウォーキング (JTBパブリック)