〈本〉「思い立ったが吉日、すぐにスタートしよう」...いつでも、いまから、これから
「こんな風に年を重ねられたら素敵だなぁ。」表紙の写真をみる度に、そんな気持ちになるのです。
「八十四歳。英語、イギリス、一人旅」(清川妙著、小学館)
53歳から英語学校に通い、65歳でイギリスへのひとり旅を始めること13回。イギリスで出会った人々との友情。ご主人と息子さんを相次いで亡くした嵐の時代。著者のしなやかに生きる姿が胸にしみる人生&旅エッセイです。
”なぜ、私は旅をするのかー。旅の間中、私はおきまりのように自問自答する。
心を洗い、洗いしごき、たとえば、私が草であるとするならば、その茎の芯のまん中の白いところのような心を取り戻すためだ。
旅を続けているうちに、心はとめどなくシンプルになり、はては透明になっていく。生きていく上に、何がいちばん大切か。そのことが身に沁みてわかってくる。”(P5)
”私はできるだけ、頭と手と体をフルに動かすことにした。(中略)悲嘆にくれた心を癒し、萎えた心を生き返らせるには、自分自身の心と体を動かすほかはないのである。
私は自分自身に、『ひとりを生きる才能を持ちなさい』と、繰り返し言い聞かせた。”(P131)
”たとえ、それが何歳のときであれ、ある時、あなたはハッと目覚めたように、何かを望み、それを叶えたいと思い立つ。おそらく、ずっとかかえてきた好きなことに、根ざしているのだろう。とにかく、思い立ったが吉日、すぐにスタートしよう。そして、あきらめず、粘り強く、楽しむ余裕も持ちながら、すこしずつ望みを育てていこう。”(P198)
先日、久しぶりに再読してみました。
この本に惹かれる理由はたくさんあります。心動かされるものに軽やかに反応する行動力。いくつになっても学ぶことを楽しみ、自分を育てていこうとする姿勢。一瞬のすれ違いで終わってしまうような出会いを宝物のように大切に育んでいかれる人間力。数え上げればきりがありませんが、いちばん惹かれるのは著者の自立心かもしれません。
「老い」というものに、よいイメージをもつのはなかなか難しいですね。これから先、これまで出来たことも少しずつ出来なくなっていくのを自覚したり、たいせつな人たちとの離別や死別と向き合わなければならなくなることが必ずあるでしょう。そのときに、『ひとりを生きる才能をもちなさい』と、自分に言い聞かせることができるだろうかと思ってしまうのです。
この本を読むと、年を重ねることはいつでも自分自身を完成させていく道のりなのだということをつらつらと考えさせてくれます。