【訃報】田辺聖子さんを悼む
先日、作家 田辺聖子さん(享年91歳)の訃報をニュースで知りました。
ここ数年、田辺さんの書かれた記事をお見かけしないなぁと思っていましたので、やっぱりという気持ちと残念な気持ちが半々です。
田辺さんの書かれるエッセイがとても好きでした。可愛らしさとしなやかさと品の良さがバランスよくそなわっていて、読むと肩の力が抜けて優しい気持ちになれました。
おいしいものを好きな人と食べる幸福。
男の人に大切なのは「可愛い気」があること。
中年からの人生が楽しいということ。
…みんな田辺さんから教わりました。
紫陽花はガクアジサイの方が好きだとおっしゃっられていたこと。
大切な資料を捨ててしまったのに、きれいな空き箱は捨てられなかったという話し。
賞などというものは、どんどん乱発すればいいと思っているということ。
…とりとめのないエピソードも次々と思い出します。
本当に身近なことを描きながらも、幸せに生きていくための基準のようなものを、その作品やエッセイの中から教わった気がします。
すぐに物事を堅苦しく考えてしまったり、ともすると、つい厳しい物言いをしてしまうことのある自分にとっては、田辺さんのようなその賢さを底に秘めて、軽やかに楽しげに生きているように見える姿は私の憧れでした。
そうそう、古典の楽しさを教えていただいたのも田辺さんの作品からでした。だいたい源氏物語のあらすじを知って読んだ気になっていますが、考えてみたら田辺訳の小説を読んだことがあるだけでした。
地名など歴史の名残りを感じられる土地で暮らすのが楽しいとおっしゃられていたことにも影響を受け、私も少しだけ歴史好きになっているように思います。
いろんな影響を与えてくれる先人というのはおりますが、こんな風に愛嬌があって可愛らしさが魅力という人にはなかなか出会えないように思います。たくさんの素敵な作品をありがとうございました。
心よりご冥福をお祈りいたします。